“トールハンマー”または“トールズハンマー”と呼ばれる複合アスペクトがあります。
北欧の神、トールが持つハンマーという意味で「トールのハンマー」と呼ばれます。冒頭の絵がトール、彼が持っているのがそのハンマー。
90度(スクエア)を成す二つの惑星に、一つの惑星が135度(セスキコードレイト)の形をとる三角形のアスペクト。YOD(ヨッド)の鋭角な三角をもう少し広げたイメージですね。
【複合アスペクト:トールハンマー図】
〔アイキャッチ画像はWikipediaパブリックドメインより,アスペクト図はACみさとんさん〕
トールハンマーは今後重視されそう
トールハンマーについては、まだ分かっていることが少なく占星術師の共通見解はないようです。
135度というマイナーアスペクトがこれまであまり重視されてこなかったので、皆が共有しているオーソドックスな解釈というものがまだ生まれていないのでしょう。
しかし今世紀に入り150度(クインカンクス)がメジャー扱いになるとともに、135度への注目度も上がっています。
たとえば、これまで無視されがちだったYODはもはや重要アスペクトの扱いとなりつつあります。ですからトールハンマーも今後重視され分析が進むのではないでしょうか。
語源の神話、共有イメージからひもとく
近代の複合アスペクトの分析を進めるためには、その通称のイメージからひもとくのが近道でしょう。
YODが「神の手」と呼ばれるのはその形状のためだけではなく、実際に「このアスペクトをネイタルに持つ人が逃れられない宿命を持つ」という事例が観察されたので名付けられた通称です。
同じく、トールハンマーすなわち「神の槌」とニックネームを付けた占星術師たちは、その名にふさわしい事例を数多く見たのでしょう。
と言うことは、「神の槌」とは何を表すのかということを調べるのが早いと思います。
雷神トールの武器はクリティカルな破壊力を持つ
トールは北欧神話の“雷神”です。天空を支配するこの雷神は最強とされ、人々の食をつかさどる農耕の神としても崇められてきました。
ローマ神のユピテル=ジュピターとも同一視されており、軍事の神として扱われることもあります。
実際、何故かは分かっていませんが“ジュピター”すなわち木星が、カルミネート(MCに近い惑星)または上昇星(ASCに近い惑星)であるとき、そのネイタルを持つ人は軍事に長ける確率が高いようです。
そんな力強い雷神トールの持つ武器も、当然ながら最強です。
冒頭の図に描かれているハンマーは、古代の戦争で本当に使われた武器ではないかと思います。
硬い物でも打ち砕くクリティカル(決定的)な破壊力を持つハンマーは、柄が短いために離れた地点へ投げて的確に的へ当てることができるのが特徴。そのうえ、敵に投げてもまた自分の手に戻ってきて再び使うことができます。古代では優秀な飛び道具として重宝されたことでしょう。
【霹靂一閃】
完全に連想の余談なのですが、トールは“雷の神”ということで『鬼滅の刃』善逸を思い出しました…。(コミック苦手な方はごめんなさい)
「霹靂一閃!」と叫び鬼を瞬殺する、善逸の最強な剣さばきはまさにトールハンマーのごとし。善逸のように人喰い鬼を倒すため使いたいものです。
アスペクトに当てはめると
このような“最強武器”の名が付けられた複合アスペクトには、やはり何か不穏なイメージが付きまといます。
決定的な破壊、粉砕、戦争勃発、崩壊、批判… 等々。
実際そんな事例を見た人がこのアスペクトに「トールハンマー」の名を与えたのでしょう。
なお、ハンマーの攻撃を受ける側になるか攻める側になるかはホロスコープによります。
たとえばネイタルに元々あるのか、トランジットで通過する惑星がこれを形成するのか。そしてサインにおける惑星の配置などでも変わるかと思います。
トランジットでトールハンマーが形成されるとき
トランジットだけでこれが形成されるときは、社会情勢に注意が必要です。
グランドクロスやTスクエアほどではないにしても、どこかの地域や国が決定的な打撃を受け、その影響が世界に波及する可能性があるからです。
また、ネイタルに135度・90度の多い国や組織がトランジットでトールハンマーを形成するときも注意すべきです。その国の悪事が明るみに出て世界中から批判を浴び孤立したり、社会システムの崩壊が起きやすくなります。
個人の場合も同じく、トランジットでトールハンマーが形成されるときは注意が必要と言えるでしょう。たとえば仕事や恋愛で打撃を受けたり、SNSなどで叩かれやすい時期と言えます。
(トランジットの件はまた具体例を見つけたら追記します)
個人のネイタルにトールハンマーがあるとき
ここからは個人のネイタルにこの複合アスペクトがある場合の解釈です。
分かっていることは少ないながらも、度数や神話イメージ、事例を参照しつつ私なりに読み解いてみました。
ハードアスペクトは「張り詰めた弓の弦」
個人のネイタルにこの複合アスペクトがあるときは、その人自身がクリティカルな武器を持つと言えます。
ハードアスペクトはエネルギー同士が引き合い緊張している状態。たとえるなら張り詰めた弓の弦のようなもの。
それは日ごろ自分を縛り付ける力なのですが、緊張を強いられるために精神は鍛練されます。
そんな緊張がふとした瞬間に刺激されて解き放たれると、張り詰めた弦が手放されるように強いエネルギーを生みます。
90度に135度とハードを重ねたこの複合アスペクトを持つ人は、矢より最強な“トールハンマー”を持つわけですから、いざというときの爆発力は強いでしょう。しかも暴発するのではなく、狙いを定めた対象へピンポイントに決定打を打ち込めます。
クリティカルな批判者、発案者としての力を持つ
現実にどう表れるかというと、トールハンマーを持つ人は
「的確な指摘をする批判者」
「ブレイクスルーの改革を考える発案者」
などになりやすいと言えます。
攻撃対象(目標)を定めたらその一点に集中し、攻撃を仕掛ける。あるいは改革を行うことができます。
戦争の時代であれば実際の軍事力として才能が発揮されるでしょうし、対戦スポーツやゲームにも向くと思います。言語が物を言う分野では、痛烈かつ的確な批判力となって表れやすいでしょう。
そのように敵と戦うための力だけではなくて、“アイディア”をもって新しい世界を切り開くという前向きな解釈もできます。この場合、改革される側は打撃を受けて復旧できなくなりますが、結果として豊かさを招くでしょう。トールが農耕の神であることに象徴されるように。(雷鳴の轟いた場所では作物がよく育つ)
ただし大きなエネルギーがあるだけに扱いは難しい能力。使いこなすには修練が必要です。
この力は必ずブーメランとなって戻って来るのですが、受け止めに失敗すると自身が打撃を受けることになります。
確信犯を演じやすい
“トールハンマーはブーメランとなって返って来る”と書きましたが、このアスペクトを持つ人はそれを分かったうえであえて仕掛ける場合もあると思います。
現代で言えば、大批判を浴びることを覚悟して発言をする、という態度でしょうか。
真の目的のためにあえて炎上を狙って計算ずくで刺激的なことを言う、などの行いです。
戻って来たエネルギーに叩かれて自分は破滅してしまうのかもしれませんが、それより先に相手にも決定打を与えていますから結果を残します。
このような行いは正しい意味での「確信犯」ということになります。
俗語の確信犯は「悪いことだと知っていて犯行する者」となりますが、正しくは「理念を確信し破滅を覚悟して遂行する者」という意味。
たとえば自由が抑圧されている社会において、逮捕処刑されると分かったうえで全体主義批判を叫ぶなどの行いですね。
相打ちで散る美学を目指しやすい人かもしれません。
武具は自分で管理すること
トールハンマーは強烈な破壊力を持つだけに、投げるべき方向を誤らないよう修練が必要と思います。
たとえば何かのカルト思想を「正義」と勘違いして、他者の言うなりに確信犯として凶行に及ばないように。力は自分自身の目覚めた意識で管理してください。
武具は常に管理点検が必要なもの、いい加減に管理して他人に盗まれ使われたら大変です。
研ぎ澄まされた自身の考えでハンマーが投げられたなら、どのような結果に終わったとしても運命だったと考えることができます。そのために生まれてきたのだ、という自覚をも得るでしょう。
惑星ごとに破壊力は異なり、サインで使い勝手が決まる
まとめ。ネイタルにこの複合アスペクトを持つ方へ
少し不穏なことも書いて怖がらせてしまったかもしれませんが、トールハンマーを持つ人は怯えないでください。あなたはそれだけの集中力がある人だ、ということを書きたかったのです。
“道具は使いよう”。
ぜひその集中力を他者を守るため、明るい未来のために活かしましょう。