西洋占星術初級講座(8) 土星で晩年と障害を読む

2018年9月27日木曜日

西洋占星術講座



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晩年を読む

前ページでは太陽・MCによって、青年期~最盛期の大きな人生の流れを解読してみました。
若い方にはそこまででも充分かもしれません。MCという人生半ばの目標ですら、十代・二十代の方にはあまりにも遠い未来過ぎて想像出来ないはずです。
しかし人生は最盛期以降も続き、その後は第二の人生とも言うべき晩年があります。
さらに言えば、死が終わりであるとも限りません。
魂は晩年で少しずつ来世を意識し、来世の準備を始めていくものです。

このページでは最盛期からさらに進んで晩年を読みます。
晩年を解読するためには第4ハウス(IC)やDSCなども役立ちますが、最も重要となるのは土星です。


土星の解釈はバラエティに富んでいる

現在、太陽については「基本性格」「自分自身」という解釈で占星術師たちの意見は完全一致しています。
ここまで不自然なほどプロたちの足並みが揃っているのは商業的な理由が多分にあるため、占星術をなりわいにしている人たちが太陽についての見解を変える日は永久に来ないはずです (全ての人が出生時間を書いた個人情報カードを携帯すべし、という法律が誕生しない限り。そんな世界も怖いものがありますが)。

しかしその一方で、土星の解釈については様々なものが生まれています。
これは土星は動きの遅い惑星でありサインで読む場合には出生時間は関係ないこと、 したがって独自の解釈をしたからと言って他の占い師たちの収入に影響を及ぼさないこと等の理由から土星には自由な議論が許されて来たのだと推測されます。
さらに「凶星」と解釈される土星に反旗を翻して別の解釈を加えるのは、20世紀的な知的好奇心にかない、多くの人々の興味を惹いたのだとも言えます。
伝統的には「束縛」の意味もある土星が、占星術師たちにとっては数少ない「自由」な議論の素材となったことは皮肉です。

土星の解釈で代表的な説には、以下のようなものがあります。
代表的な説だけ挙げましたので、もちろんこれ以外にもあると思います。
なお「○○派」は筆者による命名で一般的なものではありません。

1.伝統派、スタンダードな「凶星」説

古典的な解釈に則り、土星を「凶星」と考えます。
禍い・失脚・病・困難など、不吉な出来事は土星に象徴されます。国家や父親など、自分を保護するが束縛し圧迫する者を表すこともあります。

2.心理占星学派、「シャドウ」説

土星は心理学で言うところの「シャドウ」、すなわち無意識領域の抑圧された自己なのだ、と考えます。
1976年に出版されたリズ・グリーン著『サターン(土星)』がヒットし、心理占星学という考え方が一躍メジャーとなりました。今も非常に人気の高い分野です。
この分野では土星を単なる「凶星」と読まないことは新しいのですが、心的な「傷」や「壁」として捉え過剰に苦手意識を持つところは、まだ土星を「不吉」とするイメージを引きずっていると言えます。

3.神秘派、「人生の着地点」説

土星を56歳以降の年齢域として読み解きます。
松村潔は著書で、ホロスコープを読み解くなら人生のエンディングとしての土星を理解しなければ完全ではない(要約)、としています。
この説では土星はもはや「凶星」でも「シャドウ」でもなくなります。 
死さえ「凶」としない考えは来世を認める神秘主義に合致します。つまり来世を視野に入れなければこの説は無効となるので、 輪廻転生思想を削除してしまった近代西洋占星術の思考で理解するのは不可能でしょう。

これらの土星解釈のうち、どれを選ぶかは好みによります。
ご自身で考えた後に正しいと思う説を選択してください。


土星は晩年の太陽である

以下は筆者の考え方、占い方のご紹介です。

土星について私は個人的に、上の「3.神秘派」に概ね賛同です。
「2.心理占星学派」もかつては魅力的に思っていたのですが、自分自身が神秘体験をして以降、心理学は完全な真実ではないと思うようになりました。

確かに人間の心理は絶大な力を持ちます。心の傷を癒すことで変えられる現実もあるでしょう。 しかしやはり目の前に表れる事象は神秘世界も含めた「外界の現実」なのですから、一個の人間の心だけでは完全コントロールは不可能です。 そして実はコントロールする必要すらないのだと私は思います。

一つのホロスコープ、すなわち今世だけで運命をコントロールしなければならないと考えると、それは大変難しいので土星は恐怖の障壁となり人間の前に立ちはだかります。
心理学によって心の弱点を補い「完全なる円」を作ろうとするのも、必ず今世で全ての運命の問題を解決せねばならないと焦るからではないでしょうか。
ところが土星以遠の星が担う運命は、今世だけで解決できるとは限らないようです。
そんなに焦る必要はありません。魂の道程は長いもの。土星は受け入れるべき時が来れば受け入れられます。

そもそもどうして多くの人が土星に「苦手意識」を感じるかと言うと、遠い未来のテーマだからだと思います。
未熟な魂には、土星を受け入れるどころか今世での現実化すら難しいのです。
このため若いうちに土星ばかりに着目して深読みすることは見当違いとなる可能性が高くなります。
傷をほじくり返すように自分の土星についてのマイナス解釈ばかり読むことが好きな人も多いのですが、実はまだそんなところにはっきりとした傷はないはずで、自ら傷付けて化膿させてしまっているだけかもしれません。

筆者は、土星を「晩年の太陽」と考えています。 若かりし日の課題として今世を照らした星が太陽であったように、来世への道標として晩年を導くのが土星です。
松村潔氏が言うように
「土星が人生の着地点」
となるのは、ホロスコープ上の今世の課題を着実にこなし、MCも実現させた後の魂のみでしょう。
つまり年齢的に言えば、確かに土星は56歳以降の晩年に当たる時期を読むのに相応しいことになります。(ただし現代では50代で「晩年」と呼ぶのは難しいので、もう少し後になるでしょうか)

一応、全ての魂は出生前に、土星までは地上で現実化するよう計画して生まれて来ています。
MCまで着実にこなしてきた魂は、自然に土星を実現させます。
この場合、会社員であれば重役となったり、退職して新たなことを始める人もいます。 あるいは失脚や病気によるリタイアを選んで生まれて来る人もいます。
いずれにしても、土星が現実化した後はもう人生において他の選択は難しい状況となります。
このため、土星は古典的な占星術で「束縛」として読まれてきたのだと言えます。

運命に「束縛」されることは、必ずしも悪いことではありません。
人生の最期に振り返ったときに、土星の「束縛」が必要だったのだと感じるはずです。
MCを実現するためには太陽の通過儀礼を経て大人にならなければならなかったように、生まれ変わるためには土星で第二の成人式を迎えなければならないわけです。

この土星実現まで辿り着けずに人生を終えた場合、土星は来世の太陽となるのではないかと私は推測しています。
必ずしも度数まで一致するとは限りませんが、やり残した課題というわけで、理論的には今世土星と来世太陽のサインが同じか位置が近くなるでしょう。

(参考までに余談。筆者の場合、前世の土星と今世の太陽は同じサインではありません。それどころか前世の太陽と今世の太陽が同じですから、上の推測から完全にはずれています。これは私が前世の課題を全くこなしきれていなかったか、同じ課題で生まれて来る必要があったからだと思います。イレギュラーではありますが、自分の意志も関わっていると記憶にあります。この通り三世のホロスコープは算数のような単純計算では導き出されません。宿曜占星術の「業が前世」等々の単純な説がいかにナンセンスかが分かります)

ところで、「人生の着地点」あるいは「晩年の太陽」として土星を読む場合、少し特殊ですが現代占星術の『サビアンシンボル』の利用をお薦めします。
他の惑星よりさらに土星には詳細な解釈が求められるからです。
土星は同じサインに二年半留まるため、サインで解釈すると当然ながら同級生前後は皆同じ解釈となるわけです。
またハウスは古典的な吉凶運を読むには向きますが、個人の人生という壮大なテーマを解読するには向きません。
そのため度数ごとで解釈可能なサビアンシンボルが最も適切となります。

※サビアンシンボルとは?:女性詩人のチャネリングにより、黄道360度の宇宙的なシンボルが詩として表されたものです。この占星術については別記事でご紹介します。

サビアンシンボルの解釈は難しく誤解しやすいので、初心者の方へお薦めするのはどうかと思うのですが、土星の場合はあまり深読みしなくても良さそうです。
土星の詩文に与えられたイメージがそのまま晩年の光景となることがあるからです。
たとえば既に亡くなった著名人(年を取ってから亡くなった人)を調べると、大衆が想像するその人物像に近いイメージが詩文に表れていたりします。
このことから、土星はその人の最後のポートレートになり得るのだとも考えられます。


土星の古典的な使い方

輪廻転生視点で見れば土星は凶星ではなく、晩年の太陽である
と述べてきましたが、ホロスコープを古典的な運勢判読ツールとして使う場合には、土星は未だに昔ながらの力を発揮します。
ここでは地上的な価値観に立ち、世間一般的な意味での「障害・凶事」を占うための土星の使い方をご紹介します。
「障害・凶事」を予測する場合には、土星のハウス、アスペクトに着目します。
未来予測に用いる進行図、経過図で土星をどのように見るかは別の機会でご説明致します。

まず、出生図で大まかな障害・凶事を判読するのが先です。
大きく言って、以下のハウスに土星がある場合は次の通りの解釈をします。
ハウスを否定する占い方を選択された方はASC/IC/DSC/MCを目安として大まかに判読してください。
アスペクト詳細はこのページでは割愛します。

第1ハウスの土星

幼い頃から人生は困難なものと感じ、自信喪失しやすいようです。特にASCと土星が重なる場合(0度。合)、肉体的・精神的な障害を持つことがあります。 しかし困難を乗り越えた時、他の人より強い精神を獲得するため成功しやすくなります。

第2ハウスの土星

生涯にわたって収入面で苦労することが多いでしょう。特に土星と他の感受点との間で90度180度の困難アスペクトがある場合は、貧困で苦しむ可能性が高くなります。 代わりに堅実な金銭感覚が養われるため、晩年に近付くほど生活は安定します。

第3ハウスの土星

知性にコンプレックスを抱きやすいでしょう。コンプレックスからコミュニケーション下手となり、バカにされることを恐れます。 兄弟や友人関係に問題を抱えることもあります。努力すれば禁欲的な勉強家となり信頼されやすくなるでしょう。

第4ハウスの土星

幼少期は冷たい家庭に育ち、自分が築く家庭にも苦手意識を持ちます。温かい家庭に憧れながら家族に冷たい態度を取る矛盾があります。 120度や60度などの安易(支援的)アスペクトがあれば、良質な不動産を得て安定した家庭を築くでしょう。

第5ハウスの土星

幼い頃から遊びが苦手で、消極的な人格となります。恋愛でも奥手。困難アスペクトがあると子供に不幸が起きやすくなります。 安易アスペクトがあれば慎重さや真面目さが目上に買われて成功するでしょう。

第6ハウスの土星

仕事は地味ながら責任ある職務に就きます。重役にも抜擢されやすいでしょう。しかし厳格過ぎて職場での不和を招きやすく、部下の裏切りに遭いやすくなります。 困難アスペクトがある場合は健康面に不安があります。

第7ハウスの土星

結婚や共同事業などで苦労を強いられがちです。困難アスペクトがあればパートナーの裏切りに遭いやすくなります。 安易アスペクトがあれば、苦労はあっても土星の真面目さから長期の関係が結べるでしょう。

第8ハウスの土星

相続問題で煩わされがちです。また結婚後に悩みを抱えることもあります。どちらも親族や家族など身近な人から傷を受けやすくなります。 晩年は死後の世界に関心を持ち、思索的となります。

第9ハウスの土星

旅先での不運や、遠方からの不当な被害を表す場合があります。学術においては土星の性質が良く表れ、誰も振り向かないテーマに忍耐強く取組み評価されます。 古い宗教を信仰することにも向きます。

第10ハウスの土星

政治力があり権力志向で、一時期は高い地位も得ますが失脚しやすくなります。ただし根が真面目な努力家のため、安易アスペクトがあれば支援者が表れ人生を好転させることができます。

第11ハウスの土星

うわべの友情に疑いを持つため集団活動に参加したがりません。このため地域のコミュニティから孤立しやすくなります。 しかし少数の友には恵まれるでしょう。困難アスペクトがあると友人から迷惑を被ります。

第12ハウスの土星

情のない態度から知らないうちに敵を作っていることがあり、反撃を受けるでしょう。重大な秘密や犯罪行為に関わる場合もあります。 険悪な人々から遠ざかり内省することで悪事から身を守ることができます。

以上、簡単ではありますがこのオーソドックスな占い方は、鑑定経験上それなりの確率で当たります。(つまり現実化することが多い)
やはり昔の人が土星を「凶星」と見なしたことは理由があるのだなと思います。

しかし繰り返し書いておきますと、人間が「障害・凶事」と分類している事象は、天界(死後世界)においては「凶事」ではありません。

誠に理解しづらいことですが、天界の魂や高次霊にとっては地上の「凶事」も「吉事」も公平に同等の出来事です。
ホロスコープ上に「凶事」が表れているからと言って不幸なわけではなく、その凶事を経験することでステップアップするよう計画して生まれて来ています。
だから土星の運命は嘆く必要も恐れる必要もなく、心理的に受け入れてコントロールする必要さえなく、ただ経験し通過すれば良いだけです。
乗り越えられない魂はそこまで辿り着けませんので、土星が実現したということはその魂に「乗り越える能力がある」ということなのです。

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